いつか自分が持つことにふさわしい人間になれたら手に入れたい椅子がある。
artekのスツール60だ。
一見すると、なんてことはないスツール。
IKEAに似たような見た目のものがあるかもしれない。
でも、全然違う。
見ればみるほどその研ぎ澄まされたデザイン、圧倒的な存在感を感じる名品。
価格は種類にもよるが約3万円。(ちなみにIKEAは1,000円以下)
高い。
高いけどいつか愛用したい。
さすがにスツールに3万円は勇気がいるけれど、
これを購入できたときは、何か自分の中で突き抜ける気がする。
アルヴァ・アアルトの手掛けたこの逸品は、僕の心の奥の欲求を刺激してくれる。
アルテック(artek)スツール60とは
フィンランドの家具メーカー・アルテック(artek)が手掛けるスツール60は1933年にデザインされ、80年以上の歴史を有している。
デザインはもちろんアルヴァ・アアルト(Alver Aalto)。
フィンランドを代表する建築家・インテリアデザイナーだ。
L型に曲げたカバ材の整形合板を脚とするスツールで、あらゆる環境になじむシンプルなデザインで、スタッキングも可能。
通常のナチュラルなものだけではなく、布張りやリノリウムなど、豊富なバリエーションが用意されている。
見た目でいえば3本脚が特徴。
実は4本脚バージョンもあるけど、3本脚がスツール60らしいデザインだと思う。
ちなみに、フィンランド語ではJakkara60(ヤッカラ60)という。
スツールとして座ること以外にも、花瓶を飾ってもいいし、ちょっとしたサイドテーブルとして使うこともできる。
つまり、生活にぴったり寄り添っているプロダクト。
北欧の家具にはそういうところがある。
華美な装飾はないのだけれど、本当に生活の中で必要な機能がそのままデザインとして昇華されているような感じとでもいうのかな。
アルヴァ・アアルト(Alver Aalto)
アルヴァ・アアルトは1898年フィンランド・クオルタネに生まれたので、既に生誕120年以上が経っている。
ヘルシンキ工科大学で建築を学び、卒業後は兵役を経て、ユヴァスキュラに建築事務所を設立した。
ちなみにこの”ユヴァスキュラ”。フィンランド語で書くと、”Jyväskylä”となる。
絶対読めない。
その後、33年に初期の代表作「パイミオ結核サナトリウム」竣工され、同年ヘルシンキに事務所を移転。
そして、35年にartekを共同設立することになる。
アアルトは偉大な建築家であると同時に、外側の建物だけではなく、内側の家具・インテリアデザイナーとしても活躍した。
現代の人間は枠にはまりたがる傾向があるのかもしれないですね。
建築家は建築設計しかしない。登山家は登山しかしない。
きっとアアルトはそんな枠にとらわれず、つくりたいもの・必要とされているものを自由にデザインしたのだろう。
シンプルでピュアな想いからデザインされたものだからこそ、余計な装飾がなくとも見る人を魅了し、すっと心の中に入ってくるんだ。
タイムレスな道具と暮らしを共に
「タイムレス」という言葉がある。
意味は「時代を超越した」ということだ。
スツール60で言えば、誕生から既に80年以上経過している。
80年前と比べたら今のライフスタイルは全く違う。
一人一つのスマートフォンでインターネットにつながる時代になるなんて誰が思っただろう。
モノの価格は下がって、IKEAのような家具店も出てきた。
それでも、スツール60は残る。
時代が変わっても変わらない人間の心情に、このプロダクトは訴えかけてくるのだろう。
そんなタイムレスな道具と、日常を大事に暮らしていけたらなと思う。